勇也が今岡に呼び出される。
「謝りませんよ。」
「まあ座れよ。」
「別に俺、アイツには頭にきてて、
 いつかガツンとやってやろうと思ってたんで。」
「なあ勇也。
 大人と子供のボーダー、わかるかい?
 悪くなくても謝るのが大人。
 悪いと思っても、謝れないのが子供だ。
 どっちがいいのかはわからない。
 どっちも間違ってるかもしれない。
 ただな、どっちにしても、あとで後悔するのは
 自分なんだぞ。」


「新幹線の時刻表。
 空で言えます。
 ちぎれるほど乗ったんで。
 昔から得意で。
 その場しのぎに嘘言ったり、
 まわりに適当に、上手いこと言って。
 得意げになってた時、会ったのが彼女で。
 いいのにって。そのままで。
 何もしようとしなくていい。
 そのままでいいのにって、言ってくれて。
 なんか・・・なんかすごいほっとして。
 でも・・・何でもないふりしてた。
 カッコつけて、バカなことばっかり。
 多分彼女は、全部それをわかってて、
 これくれて。
 離れれば離れるほど、会いたくて、
 3時間あれば、新幹線に乗って顔が見たくて。
 やっと素直になれたとき、
 その人は・・・もう・・・結婚してた。
 ほんっとバカだよ。」
「・・・もっとバカなこと教えてあげる。
 毎日ね、手帳に書いているの。自分の目標。
 もう、連絡を待たない。
 丁寧に話す。
 疲れた時こそ笑顔で。
 しっかり、睡眠をとる。
 そういうことクリアしたら、ちゃんとした大人のいい女でいれば、
 失恋なんかしなかったって思ったり。
 でも本当はわかってる。
 あなたの言うとおり、私は、自分のことしか、
 自分がまっすぐいることしか、興味がなくて。
 だから・・・ダメなの。
 私が・・・ダメだったの・・・。」

勇也は、自分の企画書に
『つか、おもしろかったよ』
そうメモが貼ってあることに気づく。

「ただの仕事仲間だと思ってた。」

「・・・すいません。
 少しだけ・・・
 少しだけ、肩貸して。」
荻原がミナミを抱きしめる。

「目を開いてみれば、
 みんなそれぞれの気持ちを抱えて、
 動いていく。」

その様子を見てしまった勇也は慌てて姿を隠す。

「同僚だとか、
 この人は今、寂しいだけだとか、
 わかっているけどでも・・・」

ミナミが荻原の背中に手を回す。

「人の重さが心地良くて・・・
 また、始めたくなってしまう・・・。」


「エンジョイ、楽しんで。」
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